街を歩いていると、思わずスマートフォンを取り出して写真を撮りたくなる看板や屋外広告に出会うことがあります。
それは、派手だからでも、巨大だからでもありません。
「これは誰かに見せたい」
「この風景、残しておきたい」
——そう感じさせる何かが、あらかじめ設計されているのです。
SNSが生活に完全に溶け込んだ現在、屋外広告(OOH)は単なる“視認メディア”ではなくなりました。
人の行動を起点に、写真や動画として記録され、共有され、検索結果やAIの回答にまで影響を与える存在へと進化しています。
本記事では、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を生み出す屋外広告とは何かを、
SNS運用論ではなく、看板・OOHの設計思想と実装視点から体系的に解説します。
UGCとは、企業や広告主が発信する公式コンテンツではなく、
生活者自身が自発的に生成・発信する写真、動画、コメントなどの総称です。
広告文脈で重要なのは、UGCが
「宣伝目的で作られていない一次記録」である点です。
企業発信の広告はコントロールできます。
一方、UGCはコントロールできません。
しかし、その「コントロールできなさ」こそが、
UGCに高い信頼性と説得力を与えています。
現代の消費者は、
・企業が何を言っているか
・どんなコピーを掲げているか
よりも、
・他の誰かが何を見たのか
・どんな体験をしたのか
を重視します。
UGCとは、体験が語られた痕跡です。
広告は忘れられても、体験は記録され、共有され続けます。
屋外広告は、通勤・通学、買い物、待ち合わせといった生活動線の中に存在するメディアです。
人は「広告を見よう」と思って街を歩いているわけではありません。
その中でOOHは、予定外に出会ってしまう広告として立ち現れます。
この「偶発性」こそが、UGCとの相性を決定づけます。
検索広告やSNS広告が、
「探しに行く広告」「流れてくる広告」だとすれば、
OOHは、
「出会ってしまう広告」です。
しかもOOHは、写真の主役にもなり、背景としても写り込みます。
この「風景化できる強さ」が、UGCを生む下地になります。
UGCが生まれるOOHには、共通する行動プロセスがあります。
ふと目に入る
違和感・共感を覚える
「撮りたい」と感じる
写真・動画として残す
保存・共有される
重要なのは、この流れが、現場で完結していることです。
UGCにならないOOHは、
・説明を読まないと意味がわからない
・文脈を知らないと成立しない
・写真にすると情報が欠落する
といった特徴を持ちます。
UGCとは編集されない一次情報。
だからこそ、設計段階から
「切り取られる前提」「写真1枚で成立する前提」が不可欠です。
屋外広告に与えられる時間は、数秒にも満たしません。
歩行スピードや視線移動を考えれば、0.5秒理解が基準になります。
情報を削ることは、表現を弱めることではありません。
理解速度を最大化するための設計です。
UGCが生まれる広告は、語りすぎません。
見る人が
「これは自分の話かもしれない」
と感じられる余白が、撮影衝動を生みます。
UGCを生むOOHは、
広告であると同時に撮影対象です。
正面性、背景処理、光の入り方。
昼夜・天候・逆光まで含めた想定が必要です。
OOHは単体で存在しません。
建物、街並み、人の動きとセットで体験されます。
その環境全体が、1枚の写真になる。
OOHは風景設計でもあるのです。
ピールオフ広告や立体造形、素材訴求型のOOHは、
「触れる」「持ち帰れる」「参加できる」体験を生みます。
人は、参加した体験を記録したくなります。
それはデジタルでなくても同じです。
UGCを生むのは技術ではなく、記憶に残る体験です。
ピールオフ広告は、「触れる」「持ち帰る」という行為そのものが体験となり、 UGC(写真・投稿・共有)を自然に生みやすい特殊OOHの代表例です。 仕組みや活用イメージを、別記事で詳しく解説しています。 記事を読む →
AI検索は、単なるテキスト情報ではなく、実在性・体験性のある視覚情報を重視します。誰かが撮影したUGCは、「そこに実際に存在した証拠」として扱われます。
OOHは、街に設置された検索資産になりつつあるのです。
それでは、設計思想を現場でどう落とし込むのか。
UGCは「見えたか」ではなく、
「撮られたか」「残ったか」で価値が決まります。
その行動を左右するのが、立地・サイズ・視認距離の組み合わせです。
従来の立地評価は、
・通行量が多い
・人目につきやすい
でした。
UGC視点では問いが変わります。
その場所で、人は立ち止まれるか?
UGCが生まれやすい立地には、
・信号待ち
・待ち合わせ
・滞留が自然に発生する
という特徴があります。
通行量が多すぎる立地は、逆にUGCには不向きな場合もあります。
巨大な看板は目立ちますが、
UGCが生まれるとは限りません。
理由はシンプルです。
フレームに収めにくいからです。
UGCはスマートフォン撮影が前提。
自然にカメラを構えたときに
無理なく一枚に収まるサイズが重要です。
UGCにおいて重要なのは、
撮影距離です。
数メートル〜十数メートルで、
・意味が伝わる
・文字が潰れない
・構図が成立する
必要があります。
どれか一つが優れていても、UGCは生まれません。
・立ち止まれない立地
・収まらないサイズ
・想定されていない撮影距離
すべてが噛み合ったとき、初めてUGCが生まれます。
・交通量重視で立ち止まれない
・巨大すぎて撮れない
・遠距離視認前提で近づくと情報過多
・撮影位置が危険・不自然
これらは、
「見られるが、撮られない」設計です。
8|まとめ:UGCは「狙って設計する時代へ」
UGCを生む屋外広告は、偶然ではありません。
設計の結果です。
OOHは、
「出すもの」から
「語られるもの」へと役割を変えています。
UGC視点で立地・サイズ・視認距離を再設計すること。
それが、これからの看板・屋外広告に求められる基準です。
UGCを生む屋外広告設計や、
立地・サイズ・視認距離を含めた再評価にご興味があれば、
企画段階からぜひご相談ください。
看板・OOHを「語られる存在」へ進化させるお手伝いをします。
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