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駅前OOHと生活道路OOHの違いとは?成果を分ける屋外広告・屋外看板の設計思想

作成者: 大住 浩章|2025/11/30 15:00:00 Z

「駅前に出せば集客できる」という誤解

 

屋外広告や看板の相談を受けていると、よく聞く言葉があります。
「人通りの多い駅前に出しているのに、思ったほど集客につながらない」。

一方で、駅から少し離れた生活道路沿いの店舗が、特別派手な広告を出しているわけでもないのに、安定して検索され、来店されているケースも少なくありません。

この差は、立地の良し悪しだけで説明できるものではありません。


多くの場合、「駅前OOH」と「生活道路OOH・屋外看板」を同じ発想で設計してしまっていることが原因です。

駅前と生活道路では、人の行動も、情報の受け取られ方も、OOHに求められる役割もまったく異なります。


まずは、その前提から整理していきましょう。

 


 

1|駅前と生活道路では、人の行動がまったく違う

 

駅前は、常に人が多く、情報量も多い場所です。
多くの人は移動の途中で、次の予定や目的地を意識しながら歩いています。視界に入る広告は多くても、それを「読み取ろう」「比較しよう」という状態ではありません。

一方、生活道路は性質が異なります。
そこを通る人の多くは、その地域で生活している人です。同じ道を何度も通り、周囲の店舗や看板を無意識のうちに記憶しています。

この「通過点」か「生活圏」かという違いが、そのままOOHや屋外看板の役割を分けます。

 

2|駅前OOHの役割「理解させる広告」ではなく「覚えさせる広告」

 

駅前に設置されるOOH(大型看板やデジタルサイネージなど)は、視認性が高く、強いインパクトを持ちます。
しかし、その反面、見られる時間はほんの一瞬です。

この環境で重要なのは、情報量を増やすことではありません。
駅前OOHに求められるのは、次のような役割です。

 

・店名やブランド名を目に入れる

ロゴやビジュアルで印象を残す

・「どこかで見たことがある」という記憶をつくる


駅前OOHは、その場で理解される必要はありません。
後日、検索したときや別の看板を見たときに思い出される――
この時間差で効いてくる効果こそが、駅前OOHの本質です。

 

3|駅前OOHでよくある失敗と、その構造

 

駅前OOHがうまくいかない最大の理由は、「目立つ場所だから、伝えれば伝わるはずだ」という思い込みにあります。


駅前という環境では、多くの人が移動中で、視界に入る情報をほとんど無意識のまま処理しています。広告を“読む”準備ができている人は、ほぼいません。

 

それにもかかわらず、駅前OOHではサービス内容や強み、キャンペーン情報まで盛り込み、「きちんと説明しよう」としてしまうケースが多く見られます。しかし、視認時間が1〜2秒しかない環境では、情報量が増えるほど認知は分散し、結果として何も記憶に残らなくなります。

 

また、「せっかく見てもらえるのだから、その場で行動につなげたい」という意図から、URLやQRコード、電話番号を大きく載せる設計も少なくありません。ただ、駅前で立ち止まり、スマートフォンを操作し、情報を取りに行く行動は現実的ではありません。多くの場合、「あとで見よう」と思われ、そのまま忘れられてしまいます。

 

さらに駅前は、広告同士の競合が非常に激しい空間です。看板、サイネージ、案内表示が密集する中で、「情報量で勝つ」という発想自体が成立しません。ここで必要なのは説明ではなく、瞬時に認識されることです。

こうした前提を踏まえると、駅前OOHが成功しやすい条件は明確になります。
それは、「一瞬で何のブランドか分かること」、そして「それ以上の説明をしないこと」です。

 

店名やロゴ、象徴的なビジュアルを通じて、「どこかで見たことがある」「なんとなく覚えている」という状態をつくる。駅前OOHの役割は、あくまで“記憶のフック”をつくることであり、その場で完結させようとしないことが成功のポイントになります。

 

駅前OOHが成功しやすい条件

こうした環境を踏まえると、駅前OOHの成功条件はシンプルです。

 

・一瞬で「何のブランドか」が分かる

・ロゴや店名、象徴的なビジュアルに絞っている

・その場で完結させようとしていない


説明を削り、「覚えてもらう」ことに徹する。
駅前OOHは、行動を直接生む装置ではなく、後の選択肢に入るための装置だと割り切ることが重要です。

 

 

4|生活道路OOH・屋外看板の役割|選択と判断を助ける存在

 

生活道路沿いに設置されるOOHや屋外看板は、駅前とは正反対の役割を担います。

生活道路では、同じ人が何度も前を通ります。


車で減速しながら、あるいは歩きながら、看板や店舗外観を繰り返し目にする中で、「このあたりに何があるか」を少しずつ把握していきます。

 

この環境では、「一瞬のインパクト」よりも、「理解されること」が重要になります。
生活道路のOOHや看板は、来店を即決させるためのものではなく、判断材料を蓄積する存在です。

 

5|生活道路OOH・屋外看板でよくある失敗と、その構造

 

生活道路沿いのOOHや屋外看板では、駅前とは逆の失敗が起きがちです。それは、「見られる時間が長い=ロゴだけでも伝わるはずだ」という誤解です。

 

生活道路では、同じ人が何度もその前を通ります。
そのため、「何となく存在は知っているが、何の店か分からない」という状態が長く続いてしまうと、興味や関心が行動に変わることはありません。

 

特に多いのが、デザイン性を優先しすぎて、業態や提供価値が読み取れない看板です。
ロゴや店名は目に入るものの、「自分に関係があるかどうか」が判断できないため、検索にも来店にもつながりません。

 

また、情報を削りすぎるあまり、営業時間や営業していること自体が分かりにくいケースもあります。生活道路では、夜間や車移動中の視認も重要になるため、時間帯や視認距離を考慮しない設計は機会損失につながります。

 

生活道路の看板は、意味が伝わらなければ、何度見られても記憶として積み上がりません。

 

生活道路OOH・屋外看板が成功しやすい条件

生活道路側で成果を出しやすいのは、「少しずつ理解される設計」ができているケースです。

 

・店名とあわせて業態が想起できる

・誰向けの店かが分かる

・外観とGoogleマップの情報が一致している


一度で完璧に伝える必要はありません。
何度も見るうちに、「あの店は〇〇の店」「近くにあるから覚えている」と自然に認識されることが重要です。

生活道路の屋外看板は、来店を直接促すものではなく、検索する理由をつくる看板として設計することで力を発揮します。

 

 

6|駅前と生活道路は競合しない|OOHを「役割」で分ける

 

 

ここまで整理すると、駅前OOHと生活道路OOH・屋外看板は、どちらか一方が正解という関係ではないことが分かります。

 

駅前では印象を残し、生活道路では理解と判断を助ける。

役割が違うだけで、むしろ補完関係にあります。

 

この使い分けができていないことが、「人通りは多いのに成果が出ないOOH」を生む最大の原因です

 

OOHや屋外看板は、掲出した瞬間に成果が出るものではありません。

 

しかし、

・駅前で印象を残し

・生活道路で理解させ

・検索・マップで確認され

 

という流れができると、OOHは「掲出して終わり」の広告ではなく、
選ばれ続けるための資産になります。

 

観点 駅前OOH 生活道路OOH・看板
役割 覚えさせる 判断させる
接触 一瞬 反復
行動 後日想起 検索・比較
成果 間接的 直接的

 

 

 

7|まとめ:同じ看板でも、場所が違えば正解は変わる

 
駅前OOHは、

覚えてもらうための存在

生活道路のOOH・屋外看板は、
選ばれるための存在

この違いを理解しないまま、同じ発想で設計してしまうことが、
成果が出ない最大の原因です。

OOHを「場所ごとの役割」で捉え直すこと。
それが、これからの屋外広告・看板設計に求められています。

 

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