屋外広告や看板の相談を受けていると、よく聞く言葉があります。
「人通りの多い駅前に出しているのに、思ったほど集客につながらない」。
一方で、駅から少し離れた生活道路沿いの店舗が、特別派手な広告を出しているわけでもないのに、安定して検索され、来店されているケースも少なくありません。
この差は、立地の良し悪しだけで説明できるものではありません。
多くの場合、「駅前OOH」と「生活道路OOH・屋外看板」を同じ発想で設計してしまっていることが原因です。
駅前と生活道路では、人の行動も、情報の受け取られ方も、OOHに求められる役割もまったく異なります。
まずは、その前提から整理していきましょう。
駅前は、常に人が多く、情報量も多い場所です。
多くの人は移動の途中で、次の予定や目的地を意識しながら歩いています。視界に入る広告は多くても、それを「読み取ろう」「比較しよう」という状態ではありません。
一方、生活道路は性質が異なります。
そこを通る人の多くは、その地域で生活している人です。同じ道を何度も通り、周囲の店舗や看板を無意識のうちに記憶しています。
この「通過点」か「生活圏」かという違いが、そのままOOHや屋外看板の役割を分けます。
駅前に設置されるOOH(大型看板やデジタルサイネージなど)は、視認性が高く、強いインパクトを持ちます。
しかし、その反面、見られる時間はほんの一瞬です。
この環境で重要なのは、情報量を増やすことではありません。
駅前OOHに求められるのは、次のような役割です。
・店名やブランド名を目に入れる
・ロゴやビジュアルで印象を残す・「どこかで見たことがある」という記憶をつくる
駅前OOHは、その場で理解される必要はありません。
後日、検索したときや別の看板を見たときに思い出される――
この時間差で効いてくる効果こそが、駅前OOHの本質です。
駅前OOHがうまくいかない最大の理由は、「目立つ場所だから、伝えれば伝わるはずだ」という思い込みにあります。
駅前という環境では、多くの人が移動中で、視界に入る情報をほとんど無意識のまま処理しています。広告を“読む”準備ができている人は、ほぼいません。
それにもかかわらず、駅前OOHではサービス内容や強み、キャンペーン情報まで盛り込み、「きちんと説明しよう」としてしまうケースが多く見られます。しかし、視認時間が1〜2秒しかない環境では、情報量が増えるほど認知は分散し、結果として何も記憶に残らなくなります。
また、「せっかく見てもらえるのだから、その場で行動につなげたい」という意図から、URLやQRコード、電話番号を大きく載せる設計も少なくありません。ただ、駅前で立ち止まり、スマートフォンを操作し、情報を取りに行く行動は現実的ではありません。多くの場合、「あとで見よう」と思われ、そのまま忘れられてしまいます。
さらに駅前は、広告同士の競合が非常に激しい空間です。看板、サイネージ、案内表示が密集する中で、「情報量で勝つ」という発想自体が成立しません。ここで必要なのは説明ではなく、瞬時に認識されることです。
こうした前提を踏まえると、駅前OOHが成功しやすい条件は明確になります。
それは、「一瞬で何のブランドか分かること」、そして「それ以上の説明をしないこと」です。
店名やロゴ、象徴的なビジュアルを通じて、「どこかで見たことがある」「なんとなく覚えている」という状態をつくる。駅前OOHの役割は、あくまで“記憶のフック”をつくることであり、その場で完結させようとしないことが成功のポイントになります。
こうした環境を踏まえると、駅前OOHの成功条件はシンプルです。
・一瞬で「何のブランドか」が分かる
・ロゴや店名、象徴的なビジュアルに絞っている
・その場で完結させようとしていない
説明を削り、「覚えてもらう」ことに徹する。
駅前OOHは、行動を直接生む装置ではなく、後の選択肢に入るための装置だと割り切ることが重要です。
生活道路沿いに設置されるOOHや屋外看板は、駅前とは正反対の役割を担います。
生活道路では、同じ人が何度も前を通ります。
車で減速しながら、あるいは歩きながら、看板や店舗外観を繰り返し目にする中で、「このあたりに何があるか」を少しずつ把握していきます。
この環境では、「一瞬のインパクト」よりも、「理解されること」が重要になります。
生活道路のOOHや看板は、来店を即決させるためのものではなく、判断材料を蓄積する存在です。
生活道路沿いのOOHや屋外看板では、駅前とは逆の失敗が起きがちです。それは、「見られる時間が長い=ロゴだけでも伝わるはずだ」という誤解です。
生活道路では、同じ人が何度もその前を通ります。
そのため、「何となく存在は知っているが、何の店か分からない」という状態が長く続いてしまうと、興味や関心が行動に変わることはありません。
特に多いのが、デザイン性を優先しすぎて、業態や提供価値が読み取れない看板です。
ロゴや店名は目に入るものの、「自分に関係があるかどうか」が判断できないため、検索にも来店にもつながりません。
また、情報を削りすぎるあまり、営業時間や営業していること自体が分かりにくいケースもあります。生活道路では、夜間や車移動中の視認も重要になるため、時間帯や視認距離を考慮しない設計は機会損失につながります。
生活道路の看板は、意味が伝わらなければ、何度見られても記憶として積み上がりません。
生活道路側で成果を出しやすいのは、「少しずつ理解される設計」ができているケースです。
・店名とあわせて業態が想起できる
・誰向けの店かが分かる
・外観とGoogleマップの情報が一致している
一度で完璧に伝える必要はありません。
何度も見るうちに、「あの店は〇〇の店」「近くにあるから覚えている」と自然に認識されることが重要です。
生活道路の屋外看板は、来店を直接促すものではなく、検索する理由をつくる看板として設計することで力を発揮します。
ここまで整理すると、駅前OOHと生活道路OOH・屋外看板は、どちらか一方が正解という関係ではないことが分かります。
駅前では印象を残し、生活道路では理解と判断を助ける。
役割が違うだけで、むしろ補完関係にあります。
この使い分けができていないことが、「人通りは多いのに成果が出ないOOH」を生む最大の原因です
OOHや屋外看板は、掲出した瞬間に成果が出るものではありません。
しかし、
・駅前で印象を残し
・生活道路で理解させ
・検索・マップで確認され
という流れができると、OOHは「掲出して終わり」の広告ではなく、
選ばれ続けるための資産になります。
| 観点 | 駅前OOH | 生活道路OOH・看板 |
|---|---|---|
| 役割 | 覚えさせる | 判断させる |
| 接触 | 一瞬 | 反復 |
| 行動 | 後日想起 | 検索・比較 |
| 成果 | 間接的 | 直接的 |
7|まとめ:同じ看板でも、場所が違えば正解は変わる
覚えてもらうための存在。
生活道路のOOH・屋外看板は、
選ばれるための存在。
この違いを理解しないまま、同じ発想で設計してしまうことが、
成果が出ない最大の原因です。
OOHを「場所ごとの役割」で捉え直すこと。
それが、これからの屋外広告・看板設計に求められています。
屋外広告を
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