駅前の大型看板と、住宅街の交差点にある小さな看板。
どちらに広告を出した方が効果的でしょうか。
おそらく、多くの方は駅前の大型看板を選ぶのではないでしょうか。人通りが多く、広告そのものも大きい。より多くの人に見てもらえると考えるのは自然なことです。
もちろん、駅前の大型看板には大きな魅力があります。多くの人が行き交う場所に掲出できれば、幅広い層に広告を届けられる可能性があります。
しかし、屋外広告の効果を考えるとき、人通りの多さだけで判断するのは少し早いかもしれません。
例えば、1日に数万人が通行する駅前でも、看板が歩行者の進行方向から外れていれば、広告に気づかない人は少なくないでしょう。反対に、通行量がそれほど多くない生活道路でも、信号待ちの正面に設置された看板であれば、日常的に目に入る機会が生まれます。
さらに、その道路を通る人が広告主にとって重要なターゲットであれば、単純な通行人数では測れない価値があるはずです。
屋外広告の媒体選定では、通行量や看板のサイズ、掲出料金が比較されることが多くあります。しかし、本来考えるべきなのは、その場所を通る人が、どのような状況で広告と接するのかということです。
「人が多い場所」と「広告が見られる場所」は、必ずしも同じではありません。
今回は、屋外広告の視認性を左右する要素を整理しながら、広告効果につながる設置場所の考え方を掘り下げていきます。
屋外広告を検討する際、媒体資料に記載された通行量や交通量は、重要な判断材料になります。
1日あたりの駅利用者数、周辺道路の交通量、商業施設への来館者数などは、その場所でどれくらいの人と接触する可能性があるのかを考えるための基本的な情報です。
ただし、ここで注意したいのは、その場所を通った人数が、そのまま広告を見た人数になるわけではないという点です。
例えば、駅前広場に設置された大型看板を考えてみましょう。
駅の利用者数が1日10万人だったとしても、その全員が看板の前を通るとは限りません。別の出口を利用する人もいれば、地下通路を通る人もいます。
さらに、看板の近くを通ったとしても、実際に広告を見るとは限りません。
通勤中の会社員は電車の時間を気にしているかもしれませんし、スマートフォンで乗換案内を確認している人もいるでしょう。友人と会話している人や、周囲の歩行者を避けながら歩いている人もいます。
屋外広告は、広告を見ることを目的としていない人に接触する媒体です。
そのため、通行量が多い場所であっても、広告が自然に視界へ入る位置にあるのか、どの程度の時間見えるのかによって、接触機会は大きく変わります。
広告の前を通ることと、広告を見ることは別の話なのです。
屋外広告の効果を考える際には、少なくとも次の段階を区別する必要があります。
|
段階 |
意味 |
|---|---|
|
通行量 |
広告が設置された場所や周辺を通る人の数 |
|
視認機会 |
広告が視界に入り得る位置や状況にあること |
|
実際の視認 |
広告に目を向け、視覚的に接触すること |
|
広告想起 |
接触した広告やブランドを後から思い出せること |
|
行動 |
検索、来店、問い合わせなどにつながること |
この違いを理解しておくと、媒体資料の見方も変わってきます。
通行量は広告の接触可能性を考えるための指標ですが、それだけで実際の視認人数や広告効果を判断することはできません。
また、広告を見たとしても、ブランド名や内容が記憶に残るとは限りません。
以前の記事「OOHは『3秒で伝えろ』は本当なのか?」では、広告を見た後に何が記憶として残るのかというクリエイティブの考え方を取り上げました。
今回は、その一歩手前にある「そもそも広告が見られる環境なのか」という問題です。
どれだけ優れたクリエイティブを制作しても、視界に入る機会がなければ、その力を十分に発揮することはできません。
では、屋外広告の視認性は何によって変わるのでしょうか。
看板の大きさやデザインだけでなく、実際には周辺環境や人の動きが大きく関係しています。
駅前を歩く人と、幹線道路を走る車のドライバーでは、同じ看板でも見られる時間が違います。
例えば、歩行者が比較的ゆっくり移動する商店街であれば、店名だけでなく、短いキャッチコピーや商品写真まで確認できるかもしれません。
一方、車で走行する道路沿いでは、看板が視界に入ってから通り過ぎるまでの時間が短くなります。
もちろん、実際の視認時間は看板までの距離や設置角度、走行速度によって異なりますが、一般的には移動速度が速いほど、読み取れる情報量は限られます。
そのため、ロードサイドの広告では、大きな文字や明確な色使い、ひと目で認識できるビジュアルが重要になります。
ただし、同じロードサイドでも、信号待ちが発生する交差点と、車が流れ続ける幹線道路では状況が異なります。
ここで大切なのは、「ロードサイドだから文字を少なくする」と一律に考えることではありません。
その場所では、どのくらいの時間、広告が視界に入る可能性があるのか。
まずは、その条件を把握することが必要です。
なお、運転者に向けた広告では、視認性だけでなく交通安全への配慮も欠かせません。運転中に細かな情報やQRコードを読み取らせるような設計は避けるべきでしょう。
屋外広告では、看板の向きも重要です。
同じ交差点に設置された看板でも、歩行者の進行方向に対して正面を向いている場合と、横方向に設置されている場合では、見え方が異なります。
例えば、駅から商業施設へ向かう歩行者が多い通路に看板を設置するとします。
その看板が駅から出てくる人の正面にあれば、歩きながら自然に視界へ入る可能性があります。
しかし、反対方向を向いていれば、駅へ向かう人には見えても、駅から出てくる人には見えにくいかもしれません。
これは、店舗集客を目的とする広告では見逃せない違いです。
駅から帰宅する人に向けてスーパーマーケットの広告を出したいのか。それとも、駅へ向かう人に新しいサービスの存在を知らせたいのか。
広告を届けたい相手によって、適した看板の向きが変わることもあります。
媒体資料に掲載された写真だけでは、こうした違いが分かりにくい場合があります。
看板を選ぶ際には、正面から撮影された写真だけでなく、実際に歩行者や車が近づいてくる方向から、どのように見えるのかを確認したいところです。
人通りの多さに加えて確認したいのが、人が立ち止まる場所かどうかです。
駅のホーム、バス停、信号待ちの交差点、商業施設のエスカレーター付近などは、人が一定時間とどまる可能性のある場所です。
例えば、同じ駅構内でも、改札前の通路とホームの待合スペースでは、広告との接し方が異なります。
改札前では、人の流れが速く、広告をじっくり読む余裕がないかもしれません。
一方、ホームで電車を待っている人には、広告を見る時間が生まれる可能性があります。
そのため、比較的情報量の多い広告でも、待合空間では内容を確認してもらえる余地があります。
ただし、滞留時間が長いからといって、必ず広告を見てもらえるわけではありません。スマートフォンを操作している人もいれば、別の方向を向いている人もいます。
重要なのは、滞留する場所であることに加えて、広告がその人の視界に入りやすい位置にあるかどうかです。
「立ち止まる場所」と「広告を見やすい場所」は、重なって初めて価値が高まります。
街中の看板は、単独で存在しているわけではありません。
周囲には建物の外壁や店舗の看板、街路樹、信号機、道路標識など、さまざまな視覚情報があります。
繁華街であれば、大型ビジョンやネオンサイン、店舗のサインが密集していることもあるでしょう。
そのような場所では、看板自体が大きくても、周囲の情報に埋もれてしまう可能性があります。
反対に、広告が少ない住宅街や郊外の道路では、それほど大きくない看板でも目立つ場合があります。
例えば、飲食店の看板が立ち並ぶ繁華街に新しい飲食店の広告を掲出する場合と、住宅街の交差点に同じ広告を掲出する場合では、周囲とのコントラストが違います。
繁華街では、ほかの広告に負けない視覚的な工夫が必要になるかもしれません。
住宅街では、周囲の景観から自然に浮かび上がるようなデザインが効果的な場合もあります。
また、街路樹の葉が茂る季節には看板が隠れてしまったり、夜間は照明の有無によって見え方が変わったりすることもあります。
媒体を選ぶ際には、看板そのものだけでなく、周囲の環境も含めて確認する必要があります。
屋外広告のご相談では、駅前とロードサイドのどちらがよいのかという話になることがあります。
しかし、この二つを単純に比較して、どちらが優れていると結論づけることはできません。
広告の目的やターゲットによって、適した場所が変わるためです。
例えば、全国展開しているブランドが新商品の認知拡大を目的として広告を出す場合、幅広い生活者に接触できる主要駅周辺の媒体は有力な候補になります。
一方、地域密着型のスーパーマーケットが新規来店を増やしたい場合には、店舗周辺の生活道路や、近隣住民が日常的に利用する駅の方が適しているかもしれません。
特に、商圏が比較的限定される店舗ビジネスでは、通行量の多さ以上に、その場所を通る人が実際に来店する可能性のある生活者なのかという視点が重要です。
あるスーパーマーケットが、新店舗のオープンを告知するとします。
候補となる媒体は二つです。
一つは、乗降客の多いターミナル駅の大型看板。
もう一つは、店舗から比較的近い生活道路沿いの看板です。
ターミナル駅の方が圧倒的に通行量は多いかもしれません。
しかし、その駅を利用する人の多くが店舗の商圏外に住んでいるのであれば、広告を見ても来店につながりにくい可能性があります。
反対に、生活道路沿いの看板は通行量が少なくても、周辺住民が毎日の買い物や通勤で繰り返し通る場所であれば、新店舗の存在を覚えてもらう機会が生まれます。
この場合、広告主が重視すべきなのは、単純な通行人数ではなく、来店可能性のある生活者に、どれだけ接触できるかという点です。
もちろん、ターミナル駅の広告にも広域的な認知拡大という役割があります。どちらを選ぶべきかは、広告の目的と商圏の広さ、予算によって変わります。
大切なのは、媒体の規模だけで判断しないことです。
屋外広告の媒体選定では、これまで立地の知名度や交通量、媒体社が提供する資料などを参考にすることが一般的でした。
もちろん、これらは今でも重要な情報です。
ただし、広告主が知りたいのは、単にその場所に何人いるのかということだけではないはずです。
どのような人が通っているのか。
どこから来ているのか。
どの時間帯に人が多いのか。
その人たちは、広告主が届けたいターゲットと重なっているのか。
こうした情報を把握できれば、媒体選定の考え方は変わってきます。
看板サーチでは、株式会社evoliaが提供する人流分析サービス「Location Navigator」を活用し、エリア特性や人の移動傾向を踏まえた屋外広告の検討にも対応しています。
例えば、店舗周辺の人流を分析することで、時間帯別の来訪傾向や、エリアを訪れる人の属性、居住地の傾向などを把握する手掛かりが得られます。実際に分析できる項目は、利用するデータや分析条件によって異なります。
スーパーマーケットであれば、店舗周辺の生活者がどのようなエリアから訪れているのかを確認することで、広告を掲出する候補エリアを絞り込めるかもしれません。
フィットネスジムであれば、周辺の居住者だけでなく、通勤や通学によってエリアを利用する人にも着目できます。
商業施設であれば、平日と休日で来訪傾向がどのように変わるのかを確認し、広告を届けたいターゲットとの接点を考えることができます。
このように、人流データを活用することで、「人が多いから」という理由だけではなく、広告目的に沿った媒体選定を進めやすくなります。
ここは誤解されやすいところですが、人流データで通行傾向を把握できたとしても、その人たちが実際に広告を見たかどうかまでは、通常それだけでは分かりません。
例えば、ある交差点を1日に多くの人が通っていることが分かっても、看板がどちらを向いているのか、周囲の建物に隠れていないか、歩行者からどの程度見えるのかは、別途確認する必要があります。
また、人流データから推定される来訪者の属性や移動傾向には、データの取得方法や推計上の制約もあります。
そのため、人流分析は広告効果を保証するものではなく、媒体選定の判断材料を増やすための手段と捉えるのが適切です。
人流データでターゲットとの接点を確認し、現地調査で視認環境を確かめる。
その両方を組み合わせることで、経験や感覚だけに頼らない媒体選定が可能になります。
ここまで、屋外広告の設置場所や視認環境について考えてきました。
しかし、媒体を選んだだけで広告の成果が決まるわけではありません。
実際には、その場所に合ったクリエイティブを設計することも重要です。
例えば、同じフィットネスジムの広告を、駅のホームとロードサイドに掲出するとします。
駅のホームでは、電車を待っている人が広告を目にする可能性があります。そのため、ジムの特徴やオープン日、駅からの距離など、複数の情報を伝えられる余地があります。
一方、車が流れるロードサイドでは、細かな情報を読む時間が限られます。
その場合は、
「24時間ジム」
「○○GYM」
「○月OPEN」
といった情報に絞った方が、広告の内容を認識してもらいやすいかもしれません。
同じ広告主、同じ商品、同じキャンペーンでも、掲出環境によって適した情報量やデザインは変わります。
ここで重要なのは、すべての媒体に同じクリエイティブを流用することが、必ずしも効率的とは限らないという点です。
制作費を抑えるために共通デザインを使用すること自体は合理的です。
しかし、掲出場所によって文字が読みにくくなったり、重要な情報が伝わらなくなったりするのであれば、媒体ごとに調整する価値があります。
屋外広告のクリエイティブは、制作する段階で考えるだけでは不十分です。
媒体を選ぶ段階から、どのような広告を掲出するのかを想定しておくことが大切です。
前回の記事で取り上げた「3秒後に何を記憶として残すか」という考え方も、ここにつながります。
その場所で確保できる視認機会を踏まえ、何を記憶してもらうのかを決める。
媒体選定とクリエイティブは、本来一体で考えるべきものなのです。
では、実際に屋外広告を検討するとき、どのような点を確認すればよいのでしょうか。
媒体資料を比較する際には、料金やサイズ、掲出期間に加えて、次の5つを確認しておくことをおすすめします。
まず考えたいのは、誰に広告を届けたいのかということです。
通行量が多くても、広告主の商品やサービスと関係の薄い人が中心であれば、期待した成果につながらない可能性があります。
店舗集客であれば商圏との重なり、BtoB商材であればビジネスパーソンとの接点など、広告目的に応じて確認すべき項目は異なります。
看板がどちらを向いているのかは、基本的でありながら重要な確認項目です。
特に駅前や交差点では、同じ場所でも進行方向によって見え方が大きく変わります。
媒体資料の写真だけで判断せず、ターゲットが実際に通る方向から確認することが理想です。
遠くからでも見える大型看板なのか、近づいて初めて認識できる看板なのか。
また、歩きながら見るのか、信号待ちで目にするのかによっても、適した広告表現は変わります。
設置場所と視認距離を確認することで、文字サイズや情報量を検討しやすくなります。
周辺に競合する広告が多い場合は、クリエイティブの視覚的な強さが必要になることがあります。
また、街路樹や建物、道路設備などによって看板が見えにくくなる可能性もあります。
昼間だけでなく、夜間の見え方も確認できると、より具体的な判断ができます。
新店舗のオープン告知と、企業ブランドの認知拡大では、広告に求める役割が違います。
短期間でイベントやキャンペーンを告知したいのか、長期間にわたって地域の生活者に存在を覚えてもらいたいのか。
掲出期間と接触頻度を含めて検討することで、媒体の選び方も変わります。
これらの項目は、媒体の良し悪しを一律に判定するためのものではありません。
広告主の目的に対して、その場所が適しているかを確認するための視点です。
ここまで読んでいただくと、屋外広告の媒体選定には、通行量以外にも多くの要素が関係していることがお分かりいただけると思います。
ただし、視認環境が優れている場所であれば、必ず広告効果が高くなるというわけでもありません。
例えば、広告が見えやすい場所に掲出できたとしても、商品やサービスに対する需要がなければ、来店や問い合わせにはつながりにくいでしょう。
また、広告を見て興味を持った人が検索した際に、必要な情報が見つからなければ、その後の行動につながらないこともあります。
店舗集客であれば、Googleマップ上の店舗情報や公式サイトの内容、営業時間、アクセス情報なども重要です。
OOHは、生活者が商品や店舗を知るきっかけをつくる広告です。
その後の検索や比較、来店までを考えることで、広告の役割がより明確になります。
さらに、広告効果を検証する際には、広告掲出前後の検索動向やWebサイトへのアクセス、店舗への来訪傾向など、目的に応じた指標を組み合わせることも考えられます。
ただし、掲出前後に数値が変化したからといって、その変化をすべてOOHの成果と判断することはできません。
季節要因やほかの広告施策、競合環境などの影響も考慮する必要があります。
媒体選定からクリエイティブ、広告掲出後の効果検証までを一連の流れとして考えることが、屋外広告をより効果的に活用するための基本になります。
7|良い場所とは、人が多い場所ではなく、届けたい人に届く場所
しかし、それだけで広告の価値を判断することはできません。
駅前の大型看板が効果的な場合もあれば、住宅街の小さな看板の方が広告目的に合っている場合もあります。
その違いを生むのは、単純な人の多さだけではありません。
誰がその場所を通っているのか。
どの方向から広告を見るのか。
どの程度の時間、視界に入るのか。
そして、広告を見た人に何を覚えてもらいたいのか。
こうした条件が重なって、屋外広告の価値は決まっていきます。
人流データや商圏分析は、その判断を支える有効な手段の一つです。さらに現地での視認環境の確認や、掲出場所に合ったクリエイティブ設計を組み合わせることで、媒体選定の精度を高めることができます。
看板サーチでは、全国の屋外広告媒体の情報提供に加え、エリア特性や人流データなども踏まえながら、広告目的に応じた媒体選定をご提案しています。
「人通りの多い場所に広告を出したい」というご相談も、もちろん一つの出発点です。
ただ、その前に考えてみていただきたいことがあります。
その場所を通る人は、本当に広告を届けたい相手でしょうか。
そして、
その人の視界に、広告は自然と入るでしょうか。
屋外広告の設置場所を選ぶ際には、ぜひこの二つの視点を持ってみてください。
同じ看板でも、場所が変われば見られ方は変わります。
その違いを理解することが、広告の成果を考える第一歩になるのです。
-----------------------------------------------------
ご相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。